欲望

※ロイハボ。一応R-18。







































欲しいと思うことを悪いとは思わない。
何故なら。それは、本能というものに根差す感情だからだ。



「たい…さ?」
戸惑いの色の濃い呼びかけを発した青年の瞳は、その声同様に戸惑いが浮かんでいる。
半ば強姦に近い形で身体を繋げたと言うのに、嫌悪の色は欠片ほども見出せないそれ。
その事実に、私は心の中で安堵の溜息をもらした。


金色の毛並みの、私の飼い犬。
元が野良だからか恭順の意を示す事は決してないが、それでも意外なほど忠実で。
いつの間に、こんなに囚われてしまっていたのか。
ただ、彼を欲しいと思う心に偽りはないのだ。


「ん……っ」
目許に浮かぶ滴を舌で舐め取ってやれば、深く自身を収めたままの内壁がひくりと蠢いた。
眉を寄せて耐えようとする表情がひどく艶めいていて。
背筋がぞくりと粟立つ。
「ハボック」
耳元で名を呼んでみれば、恐る恐るといった様子で瞑っていた目が開かれた。
その、深い青の瞳が涙に濡れて潤んでいて。
「色っぽいな、少尉」
囁いてやれば、瞳の内に見える戸惑いが大きくなる。
こちらの真意を図るような、そんな眼差し。
「抵抗しないのかね?」

されれば、ここまでの行為に及んだりはしなかっただろうに。
少尉が抵抗しないから、歯止めがきかなかった。

「た、いさは…抵抗…して欲しかった、んです……っ…か?」
「さあ、どうだろう」

身体を繋げたい欲はあったけれど。
して欲しかったのかも知れない。
そうすれば、こんな風に傷つける事はなかったはずなのだから。

「たい、さ?」
吐き出す息と同様に震える声。
身体は苦痛と快楽に対する反射でこわばりはするが、それ以外では一切抵抗の意思は見られなかった。

だから分からない。
お前は何故、こんな行為を許す?

「…大佐」
完全に動きを止めた私に、少尉が呼びかけてくる。
少し苦しそうに眉をひそめて、その唇が苦笑の形を刻む。
「俺…は、自分の、意思で抵抗…しな、かった…んですけど?」
苦しそうな吐息と共に吐き出される言葉に、一瞬意味が分からず思考が停止した。

――それは、どういう意味だ?
都合良くとって良いということか?

「…何故?」
震える声で問う。
問われた当の本人は、小さく首を傾げて私に向かって手を伸ばす。
その手が頬に優しく触れるのに心が震えた。
「さあ……よく、わかんない…っスよ…俺にも…」
でも、俺はアンタの事だけは拒めないんです。
優しい色を宿す瞳でそう告げられて。
「まるで、告白だな」
言ってやれば、そうですねと返される。
そんなやり取りを許されたのが純粋に嬉しい。

このプライドの高い男が同性に組み敷かれるなど許すとは思っていなかったから。
絶対に罵倒されるか、軽蔑されるかどちらかだと思っていたから。

頬に手で触れ、その涙の跡を辿り。
「ハボック、いい、か?」
問いかけながら、やんわりと腰を進める。
「ん…大丈夫っス、から…」
何が、とは言わないし聞かない。
お互いに、それを問うことの無意味さはわかっていた。
そんなことを問わずとも、互いが何を望んでいるかなど手に取るようにわかる。
「…っ……あ」
手で反応を示しているそれを包んで扱く。
「ひぅっ…っ…」
途端にびくりと強張る身体。
うっすらと開かれた青い瞳が涙で滲んでいる。
「ハボック」
呼ぶ声に応えるように、背に手が伸ばされ。
しがみつかれる。
絞めつけがきつくなって気持ちいいが、少し苦しい。
「ハボック、もう少し緩めろ」
「んな…む、りに……決まってっ」
「ちゃんと息を吐け」
「でもっ」
無理だと首を振る仕草が、ひどく幼く見える。
キスをひとつ唇に落としてやり、優しく頬を撫でて。
「大丈夫だ。ひどくしないから」
耳元に囁く。
「ん……っ…や」
耳にかかる吐息に反応したのか、受け入れた内壁が柔らかく絡みついてくる。
はあ、と吐き出される息を確認し。
動きを再開する。
「…ああっ」
上がる悲鳴に唇を歪めて、仰け反った首筋に噛みついてやった。



欲しいと思うことを悪いとは思わない。
何故なら。それは、本能というものに根差す感情だからだ。

故に。だから。

私は彼を手に入れるとそう決めたのだ。
















※前にあるヒュハボと同じテーマで書いたもの。サルベージ品。


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