愛情過多な日常

※にゃんこ小話。お題と正反対な感じで一応わんこ×にゃんこ。旧サイト内企画『恋模様20のお題』より。









「………」
朝、目が覚めて。
真っ先に視界に入ったその寝顔に。
ロイ・マスタングは反射的に身を強張らせた。
カーテンの隙間からもれる朝の日差しを反射してキラキラ輝く金色の髪。
実は整った顔立ち。
今は閉ざされている瞳は空を写し取ったような青。
普段はその身に纏う雰囲気が曖昧にしている独特の気配。
そんな彼を形作るものを、ロイは良く知っている。
でも、意外に長い睫が髪と同じ色であることは今日初めて知った。
猫の姿の時のロイはとにかく眠さに勝てなくて、そんな事さえ今の今まで知らなかったのだ。
いつ人間に戻ったのか、今のロイの姿は猫ではない。
隣に眠るハボックも犬ではなく人間の姿で。
普段なら決してありえないほど近くに顔があった。
つい食い入るように見詰めてしまう。
ハボックが目を覚ます気配はなく、
「…ハボ」
何となく寂しくなって、小さな声で呼んでみる。
当然ながら返事はない。
そっと、ロイは手を伸ばしてハボックの髪に触れてみた。
犬の姿の時と同じ、僅かに硬いが触り心地の良い髪だ。
「…大佐、さすがに起きるに起きれないんですけど…」
「っ!!!…お、起きていたのかっ」
起きていると思っていなかっただけに、かけられたその声に飛び上がるほど驚く。
さらに驚いた拍子に猫になってしまったらしく、ロイの視界は急に低く狭くなった。
そんなロイの頭を撫でて、まだ眠気の残る青い瞳が優しく笑う。
「おはようございます、大佐」
『う…うむ』
「そろそろ起きないと遅刻ですね」
中尉が怖いからさっさと支度しましょうね。
そう言って、額に触れるだけのキス。
途端、視界が元の――つまり人間の――高さに戻る。
突然の事に呆けるロイだったが。
そんな彼の様子などきれいに無視して、
「さてと、まずは…」
などと独り言を言いながら、ハボックは一人だけさっさとベッドを降りてしまう。
戻すだけ戻してあとは無視を決め込む彼に、ロイは不満げに唸った。
「…愛が足りないぞ、ハボ」
「元よりありませんから、足りないのは当然っスね」
「ハボックっ!」
「嘘ですよ、嘘。愛してますよ、大佐」
くすくすと楽しそうに笑われて、漸くからかわれているのだと気付いたロイは。
「…………」
不機嫌な表情で、床に足を下ろす。
まだ笑っているハボックを睨み付けると、漸く笑いを収めた。
残ったのは少し困ったような微笑だけで。
「大好きですよ、ロイ」
そう囁かれれば。
何だか誤魔化されているような気がしないでもないのだが、結局ロイもそれ以上怒る事はできなかった。
















※朝の一幕。どっちかと言うとハボ←ロイ。


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