恋は盲目、はなかなかに名言だ

※微妙にハボ→ロイ?なわんこ×にゃんこ小話。旧サイト内企画『恋模様20のお題』より。









『ハボ!』
猫語での呼びかけに。
俺はのんびりと頭上を見上げた。
そこには、木の枝にしがみつく、よく見知った黒猫の姿がある。
「何してんですか」
『見れば分かるだろう!』
それはもちろん。
分からないはずがない。
今にもずり落ちそうな身体を、細い爪で必死に枝に掴まる事でなんとか止めているらしいとか。
また、降りられなくなるってのに登ったのかとか。
「一応聞きますが、大丈夫ですか?」
『これが大丈夫にみえるか!?』
半ば悲鳴のような声。
その間にもまだ数センチ位置が下がっている。
「俺は降りられなくなる高さには登るなって言いましたよね」
のんびり問えば、キッと睨み付けてくる。
が、その拍子にバランスを崩し、慌てて枝にしがみつき直した。
言っちゃ悪いが、何とも間抜けだ。
『いいからさっさと助けろ馬鹿者!!』
「…………」
それが人に物を頼む態度なのか。
そう思ったが、そろそろ限界そうなので助けてやる事にした。
犬型から人型へ。
一瞬で変化して、そのままひょいと枝を掴む。
もともと人間の姿なら大した高さではないのだ。
ぼとりと落ちた猫、じゃなくて大佐を受け止める。
『も、もう少し優しい降ろし方があるだろうがっ』
「だって面倒じゃないっスか」
『面倒とは何だ!上司が困っているというのに!!』
「普通の上司は木に登った挙句降りられなくなるなんて間抜けな事はしませんよ。…まぁ、その前に猫になったりしませんけどね」
『む…』
言い篭められて黙った大佐だが、不満を表わすように耳は寝てしまっているし尻尾も不機嫌そうに振られている。
すねているとも言いかえられるかもしれないその姿に、思わず苦笑してしまった。
事実を付きつけられて言い返す言葉がないのか、うううと唸って視線を逸らしている。
なんとも愛らしい生き物だ。
ちょっと間が抜けているところが味なのかもしれない。
「…ああ、あれっスね」
『?』
「馬鹿な奴ほど可愛いっていう、アレ」
『!!!!』
バリっと。
抱いていた腕と手を見事に引っかかれた。
結構痛い。
腕から飛び降りた大佐は尻尾を膨らませたまま、すたすたと早足で歩いていってしまう。
その後ろ姿も可愛いと思う辺り、我ながらかなり重症だと、そう思った。
















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