独占欲










先攻:ジャン・ハボック



何故こうなったのか、よく分からない。


今、俺は大佐にソファー代わりにされていた。
いや、抱きつくような格好になっているのだから、枕代わりかもしれないが。
ともあれ、ここは男二人で抱き合って横になるには少し狭かった。


何故こんな事になったのか。
思い出してみても理由らしいものは浮かんでこない。


ソファーに仰向けに寝そべって寛いでいたら、大佐が腹の上に乗ってきて。
まず煙草を取られた。
それから、大佐は何故か満足げに肯いて。
そして…今の状態に到る。
時々、頬や首にあたる髪がくすぐったいだけで。
やっぱり何故こうなったのか、よく分からない。

「大佐」
「なんだ」
「………」
「………」
「…重いんですけど」
「私は重くない」
「でしょうね」
「…黙っていろ」

ああ。理由はまるで分からないが一つだけ分かったことがある。

「…わがままな飼い主を持つと大変ってことっスね」









後攻:ロイ・マスタング



何故こんなことをしたのか、自分でも分からない。


今、私はハボックをソファー代わりにしている。
いや、抱きつくような格好になっているのだから枕代わり、と言うべきか。
男二人が眠るには明らかに狭すぎるこの場所で、それでも離れ難いのは何故なのか。


何故こんなことをしたのか。
考えてみてもはっきりとした答えは見えてこない。


ソファーに仰向けに寝そべって寛いでいたハボックの口元には、とうに見慣れたはずの煙草があって。
よく分からないが無性にむかついた。
その衝動のままハボックの腹に乗り上げ、煙草を取り上げてみて。
煙草の無くなった唇に、酷く満足感を覚えた。
そのまま胸に頬を押しつけるようにして抱きついて。
そして…今の状態に到る。
規則正しく聞こえる心臓の音が心地いいが。
やはり何故こんなことをしたのか、自分でも分からない。

「ハボック」
「………」
「返事くらいしろ」
「…アンタが黙ってろって言ったんですよ」
「私が呼んだんだから返事をしろ」
「…はいはい」
「はいは一回だ」
「はい。で、何ですか?」
「……別に。呼んでみただけだ」
「はあ」
「何だ、その気の抜けた返事は」
「…煙草吸ってもいいですか」
「だめだ」
「何でっスか」
「わからん」
「なら」
「だめだ」
「………」
「恨めしそうな顔をするな」
「………」
「そんなに煙草がいいのか?」

ああ。理由はまるで分からないが一つだけ分かったことがある。

「…気まぐれな飼い犬を持つと大変だということか」


それはアンタでしょう、と言われたが、無視した。
















※意味もなく、落ちもなし。


BACK